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プログレッシブ・ハウス考
Written By 真利夫
唐突ですが本来「枠組」のあるはずの「ジャンル」音楽が、「枠組」がないと想定され、聞かれたり作られたりすると、音楽が軟弱化するように思えてならなりません。音楽が「枠組」「スタイル」に意識的なのは当たり前な話です。ダンス音楽もしかり。これを忘れてふにゃけた垂れ流し音を生産する輩のいかに多いことか。で、「本当に良い音楽というものは『ジャンル』なんて関係ねぇんだよ」という言説には罠があるように思えるのです。例えば、音楽が市場に紹介される時にすでにジャンル分けがなされていることに気が付かずにいる罠。ロックな人はロックに。ジャズな人はジャズに。そうやってロックやジャズという「ジャンル」は「総音楽化」します。「ジャンル」音楽の聞き手である彼の中で「ジャンル」=本来あるはずの壁が消解してしまう。というか、彼の周りにロックが過剰に溢れていたら「ジャンル」の壁などそもそも存在していなかったのかもしれません。
さて上の言葉はそのままハウスやテクノなどの言葉に置き換えてみても、幾分かは当たらずとも遠からずなのではないでしょうか。特定の音楽を差して「そんな音楽くだらねぇよ」という人がいますが、彼は“そんな音楽”を知りもしないで価値判断を下している可能性があります。そして知る努力をしないと、聞き手である彼から見えない「ジャンル」音楽に、しらずしらず捕らわれてしまうこともあるかもしれないのです。別に攻撃するわけではありませんが、ハウスにおける「BODY&SOUL」状態…だなんて(一部のひねくれものが感じでいるだけです)。
Chicken Lips/Echoman(Kingsize (UK))
そんな折、ハウス・テクノ周辺でニューウェーブ・リバイバルが発生したのは絶妙のタイミングだったといえるでしょう。音楽的に外界の刺激を求める運動がニューウェーブの本質(の幾分か)だったのですから。で、その最右翼を担うのが例えば人気のチキン・リップスだったりするのですが、人間は“慣れる”生き物ですので、かくも懐かしくも鋭的に感じられる音ですら、外界を知る努力を怠ると再び「ジャンル」音楽の「総音楽化」が発生してしまうかもしれない。だいたい、古典的なポップ音楽の天才と呼ばれる人たちは、やはり異文化からの影響を作風に反映させた結果に傑作をひねり出して、その後凡庸化してきたよう気がしませんかねぇ…(ジャーマン・ロックとPILの関係もしかり)。ただし現状、一見クロスオーバー化が進んだように見える「ジャンルが総音楽化した」音楽内においては(実際クロスオーバーしているのかもしれないが、いろんなジャンルを咀嚼した結果、より強固な「ジャンルが総音楽化した」音楽を作り上げてしまった)、そう簡単に別「ジャンル」からの刺激を受けることが難しい。だから別「ジャンル」を知る努力が必要になります。
唐突にハウス周辺に話を絞ると、「ジャンルが総音楽化」した音楽を再び「ジャンル」音楽に変換する良き紹介者となっている人間が、レーベル「Hooj
Choons」を運営するRed Jerryなわけです。一般的にプログレッシブ・ハウスのレーベルと思われていますが、恐らく対世界的なマーケットで、ダンスミュージックの再ジャンル化による活性化を、商業的にも創造的な面でも、希有にして成功している例だと思えるのです。「アンダーグラウンド」という言葉がありますが、私達は最近、なんだかこの言葉のマジックに良かれ悪しかれだまされているような気がしませんか…。例えば、今のデトロイト・テクノが「アンダーグランド」で「ニューウェーブ・リバイバル」および「エレクトロ・クラッシュ」が「アンダーグラウンド」ではないのでしょうか。そして「プログレッシブ・ハウス」もまた…。「アンダーグランド」という言葉を判断基準に、軽々しく「ジャンル音楽」を判断すべきではありません。本当に聞き手が音楽に対して新鮮さを求めるのならば、その「ジャンル」を知ることなのです。そして、まあ狭いながらも「ハウス」「BPM音楽」において様々な「ジャンル」音楽を積極的に吸収しようとしているのが、Hooj
ChoonsでありRed Jerryであるように感じられるのです。言い過ぎかもしれませんが。そういえば、これって「DJ」という存在についても当てはまるような気がしますね。
V.A.
/ Le Future Le Funk (Hooj Choons)
というわけでRed JerryのミックスCD『Le Future Le Fumk』を聞いてみて下さいな。20年遅れの蒼きディスコマジック「Metro
Area」フロム・ニューヨーク、ストレイト・トゥ横隔膜ベース「Cris Lum」フロム西海岸、デジタル・ネオ・サイケデリック「16B」フロム・ロンドンをはじめとして「Brooks」に「Black
Strobe」でテクノ臭のエッセンスも加えつつ構成されるナイスな音環境。別にプログレッシブ・ハウスという肩書きで敬遠してもいいですけれども、ダンス音楽における異化作用ということを、初期テクノ以来忘れている人には、ぜひともオススメしたい。更にいうならば、プログレッシブ・ハウスの本領は、その中のごく一部で行われているハフラー・トリオ顔負けの音響構築=あり得ない音群の同居にあると言え…(具体的には西海岸のFADEレーベルなど)、ですから1枚のレコードの中においても、本来はスムースに流れる曲展開の中において、ハッとさせる瞬間の幾多で構成されているわけです。私の考えるプログレッシブ・ハウスというのは。その瞬間はDJならばツナギで、レーベルならば「ジャンル」を“知る”ことによってもたらされるのでありますから、プログレッシブ・ハウス(の一部)は実に首尾一貫した「スタイル」を確立しているのだなぁと。
※注:上記はすべて筆者の妄想です
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